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第6話 助けたのに

Autor: 雨音休
last update Fecha de publicación: 2026-04-12 10:21:28

 村の北出口から外へと出る。

 草原地帯があった。ところどころには岩がある。そこにいる魔物はフェアウルフの一種類。灰色の毛並みをした狼であり鋭い牙を誇っている。大型犬ほどのサイズだ。

 狩りをしているプレイヤー数は多く、必死の形相でモンスターと戦っていた。

「俺の、俺の宿代をー!」

「私はまだ朝食も食べていないんだからね!」

「や、やべえやべえ、こいつら強えぞ!」

 トウマは顔をしかめた。このゲームのプレイヤーはみんな無職なのだろうか?

 分からない。

(そう言えば、俺も朝食を食っていない)

 ドンと音がして、頭上に文字が表示された。

 ――クエスト、フェアウルフの撃破

 隣にいるウミがこちらに顔を向ける。その表情はわなわなと震えていた。心配した様子である。

「トウマ、みんなが困っています。助けに行かないと!」

「無駄だ。それよりもフェアウルフを狩るぞ」

「ダメですぅ。情けは人のためならず、ですよ!」

「馬鹿お前、行くな!」

 トウマの伸ばした手は空を切った。

 少し離れたところにHPが尽きそうな男性プレイヤーがいた。その助太刀にウミが参上する。猫耳の上に赤い剣のマークが灯った、フレイムウェポンを唱えたのだろう。

 続けてウミが声を張った。右手をピースにして目元に掲げる。

「スマイルチャージ」

 その場にいる全員の顔に笑みが刻まれる。特にバフ効果は無いようだ。

 ……何だ今のスキルは?

 空中にコメントが流れる。

:ウミちゃん行ったー。

:おせっかいである可能性を物ともしない行動にしびれるぅ。

:このクエスト久しぶりに見た。

:クエストは貴重だから、ここは評価Sで頼む。

 いつの間にか視聴者数が増えているようだった。暇人である。

 本当は独自でフェアウルフを狩りたいところだった。ただウミを放っておくわけにはいかない。トウマは彼女の背中を追った。

 ウミのそばでは男性プレイヤーが尻餅をついている。フェアウルフの攻撃を受けすぎたせいで瀕死だった。

「ひ、ひいぃぃ」

「こんにちは! 貴方、下がってください!」

 ウミが両手に剣を構えて男性プレイヤーの前に立つ。守るように立ちはだかった。

 二頭のフェアウルフが凶暴に吠える。

「「がるぅぅ!」」

「私にかかってきなさい!」

 茶色い尻尾をモフモフと振ってウミが剣を振り下ろす。切っ先がフェアウルフの顔面を斬り裂いた。HPバーがちょこんと減少する。

 しかしもう一方のフェアウルフが男性プレイヤーを狙っていた。突撃をしかける。そこをウミが身をていして守った。

「キャアッ!」

:ウミちゃん、やばい!

:狼に食べられるよ!

:このクエスト逃したら、次いつ来るか分からんぞ。

:死んだら再挑戦しても評価落ちるよ。

 トウマの眉間にしわが寄る。

 面倒だな。

 首を振る。それから顔を上げた。

「こうなったら、やるか」

 しかしである。

 このゲームのバトルにトウマはまだ慣れていない。

 覚えているスキルはというと。

 グラヴィティライン(動きを封じる)。

 リダイレクト(攻撃方向を変える)。

 フィールドハック(地形利用の最適化)。

 ステータス画面を表示させてスキルの説明文をよく読む。

 やがて、ウミは防戦一方になった。フェアウルフの攻撃を避けては防御する。

 トウマは戦況を慎重に観察していた。

 そしてある時、片方のフェアウルフの毛が赤いオーラに包まれた。必殺技をウミにお見舞いしようとしている。

(今だ!)

「リダイレクト」

 敵の頭上にchangeの文字が浮かぶ。フェアウルフが攻撃方向を変えた。もう一方のフェアウルフに鋭い牙を突き立てる。

「きゅおぉぉん!」

 噛まれたフェアウルフは悲鳴を上げてHPを一気に無くした。

 トウマは右手をグーにして掲げる。

 上手く行ったようだ。

 リダイレクト――敵の攻撃方向を変えるスキルである。

「ご主人様!」

 ウミが目を輝かせている。

 トウマは引きつった笑みを浮かべて、残ったもう一体に唱えた。

「グラヴィティライン」

 青黒いロープが伸びてフェアウルフの足に巻き付く。行動不能に陥れた

「よおおっし、行っくぞー!」

 ウミが近づき、敵に何度も剣を振り下ろす。バフスキルのおかげでその攻撃力はわりと高い。フェアウルフのHPはどんどん削れた。

:うおおおおっ、ウミちゃん強い強い!

:ウミちゃん助けに行くの好き。

:助けても意味ないのにやるの草。

:だから初心者さんは貧乏なんだよ。

 トウマは試しに空中で杖を振ってみた。すると紫色の魔法弾が放出されてフェアウルフに命中する。これがトウマの通常攻撃のようだ。

 攻撃を何度も被弾した敵が「きゅーん」と鳴いて地面に崩れる。

 ――クエストクリア

 トウマ

 効率A→[短時間クリア]

 技術B

 意義C→[救助判断遅れ]

 魅せC

【総合評価B】

【+180ヴァル】

 ウミ

 効率D

 技術E→[レベル1では良くやった方]

 意義A→[他人救助]

 魅せC

【総合評価D】

【+80ヴァル】

 これしか稼げないのか。

 朝飯代にもならない。

 トウマは不服を感じつつウミに近づいた。ウミは自分の評価を見て頬を膨らませている。はっきり二重にはしわが寄っていた。両手の甲を腰に当ててつぶやく。

「助けたのにぃ。また私の評価が低いですぅ」

「それで、いくら稼げた?」

「え?」

「助けは、金になるのか?」

「でも……」

 ウミは小さくつぶやく。

「男の人は助かりました」

「見ろ」

 トウマが手を伸ばす。

 その先に男性プレイヤーはもういなくなっていた。

 お礼も言わずに逃げたようである。

「あれ、男性がいませんっ!」

「これが現実だ」

 ウミが耳を垂れてしょんぼりとする。目の周りにしわを寄せた。モフモフとした尻尾が力なく揺れる。

(あの男を見捨てて、フェアウルフだけ狩った方が効率は良かったな)

 ウミが顔を上げる。明確な意志のこもった瞳。静かに宣言した。

「それでも、見捨てるのは違います」

 ウミは視線を合わせてそらさない。

 トウマは鼻にしわを寄せる。

「優しさは、余裕のある奴のやることだ」

「おい、ヤバいぞ!」

 少し遠くで他プレイヤーの声が上がった。

 眉を寄せて、トウマとウミがそちらに顔を向ける。

 黒い渦を巻いて、一頭の巨大なウルフが草原の中心に立ち上がっていた。黒い毛並みに獰猛な牙。その瞳は鋭く、不気味な輝きを放っている。

 ――クエスト、テラーウルフの撃破

 トウマの顔が硬く強ばる。

 こいつに、効率は通用するのか?

 負ければリスボーン。

 だけど、デスペナルティがあるだろう。

 稼げなければ、

 生活費はじり貧だ。

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輪廻
一昔前のRPGなら、ゲームオーバーになる度所持金半分になりますな( ºωº )チーン…
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